「検査」という言葉が出た瞬間、石川青夫妻の顔色が急変した。彼の妻は驚いて夫の腕をつかみ、その力の強さに石川青は思わず声を上げそうになった。
「これは...安藤社長、検査なんて必要ないんじゃないでしょうか。私たちは急いで家を手放したいので、検査結果を待つ余裕がありません。それに、この横浜市で誰があなたや福井社長を騙そうなんて思うでしょうか」
石川青は妻の手を優しく払いのけ、姿勢を低くして愛想笑いを浮かべながら安藤凪を見た。
「結局は数千万円の物ですから、やはり検査したほうが良いでしょう。ご安心ください、専門家に来てもらって検査します。全室検査で当日に結果が出ます」
安藤凪は微笑みながら、石川青の言い分に全く取り合わなかった。
石川青は安藤凪が検査するだけでなく、全室検査をすると聞いて、額から豆粒ほどの汗が流れ落ち、ぽたりと床に落ちた。