第500章 再会

安藤凪は部屋を出て、温泉湯のレストランへと向かった。レストランに行くには中庭を通らなければならない。夜の静かで少し湿った空間には、虫の澄んだ鳴き声が響いていた。

そのとき、背後から「パキッ」という音が、はっきりと聞こえた。

誰かが枯れ枝を踏み折ったような音だった。

安藤凪の心臓がドキリとした。冷たい風が顔を撫で、彼女の心に不安が広がり、腕には鳥肌が立った。振り返る勇気はなく、足取りは自然と速くなった。このとき、以前見た恐怖映画の場面が安藤凪の頭の中によみがえった。

背後の異様な音はますます明確になり、彼女は息を殺した。中庭を通り抜けようとしたとき、突然腕が冷たい手に掴まれた。その瞬間、安藤凪の心臓は二秒間停止したかのようで、思わず悲鳴を上げた。

「凪ちゃん、僕だよ」