第508章 面白い見世物

講演の当日、安藤凪は福井斗真が車で学校まで送るという提案を断り、自分一人で黒いアウディに乗って、東京大学に控えめに現れた。東京大学の百周年記念式典では、遠くからでも空高く浮かぶ赤い風船が見えた。

赤い風船には「百周年記念」の五文字が貼られており、東京大学の正門には風船で作られた赤いアーチが設置され、入り口には赤いカーペットが敷かれ、校内では校歌が流れていた。

安藤凪はわざとサングラスとマスクを着用し、入口で人が多いのを利用して自分の名前を書き込み、急いで中に入った。8年か9年経っていたが、東京大学の姿は自分の記憶の中のものと変わっていなかった。

校門を入るとすぐに、至る所に赤い風船が見え、胸に赤いリボンを付けた活気あふれる学生たちがいた。彼女は時計を見て、まだ時間があると思い、学校内を散策することにし、すぐに大講堂に向かうつもりはなかった。