第507章 盗人の梁を柱に換える

彼は最後に決心したように、歯を食いしばって口を開いた。

「こうだ、百万円だ。それから君の友達も百万円。そうすれば枠を確保して、他の人に入れ替えることができる。とにかく今日の午後には、誰のものであれ、二人分の資料を送り返さなければならないんだ。」

百万円。木村仁東の顔に暗い影が走った。親戚だと?単にお金が欲しいだけで、しかも最初から十万円も上乗せしている。もし自分がすでに約束していなかったら、福井グループなんか行きたくもなかった。

彼は渋々同意した。

「わかった、百万円就百万円。いとこ、友達に伝えてくる。ところでいとこ、誰の資料を返すかはいとこが決められるんだよね?」

木村仁東はいとこから肯定の答えを得て、やっとこの百万円の価値があると感じた。自分が会いたくない人を排除することもできるのだから。

木村仁東は電話を切ると、すぐに鈴木雪乃に連絡した。

鈴木雪乃はこの頃、落ち着かない日々を送っていた。温泉湯で出会った男性のことばかり考え、そのせいで木村仁東をますます見下すようになり、帰ってきてからは木村仁東と一切連絡を取っていなかった。

木村仁東は他のことでは傲慢だったが、鈴木雪乃に関しては冷たくあしらわれても構わなかった。彼が鈴木雪乃に電話をかけたとき、鈴木雪乃は面倒くさがって出たくなかったが、彼の粘り強さに負けて最終的に電話に出た。

鈴木雪乃は咳払いをして、ちょうど起こされたような眠そうな声を装った。

「木村くん、何かあった?」

「ごめん、雪乃、寝てたか?今、君の寮の下にいるんだ。すごく重要な話があるから、ちょっと降りてこないか?福井グループのインターンシップの枠のことなんだ。」

木村仁東は最後の一文を言うとき、こそこそと周りを見回し、わざと声を低くした。

福井グループのインターンシップの枠?

「わかった、今すぐ行くわ。」木村仁東を断るつもりだった鈴木雪乃は、福井グループのインターンシップの話を聞いて、結局承諾した。

彼女は電話を切ると、簡単に身支度をして出かけた。

階下に降りると、鈴木雪乃は同じ寮の友人と出くわした。その友人は学校で有名な高飛車な美人で、赤松紫花という名前だった。デザイン学科の彼女は常に鈴木雪乃より数段上にいて、今回の福井グループのインターンシップリストにも赤松紫花の名前があった。