第497章 なし

福井斗真は暗い表情で彼女を二度見つめ、そして傍らから自分のスマホを取り出して安藤凪に渡した。

「信じられないなら、調べてみるといい。何か見つかったら、今日のことは水に流そう。何も見つからなかったら、罰則は倍だ」

何の罰則が倍になるというのだろう。

安藤凪は目を見開いた。こんなことに罰則があるのだろうか。

こんな昔のことで、自分と鈴木湊が一緒にいた時、まだ福井斗真なんて知りもしなかったのに。安藤凪は自分が不当に扱われていると感じた。彼女は目の前の黒いスマホを見て、思わず唾を飲み込み、二秒ほど迷った後、受け取った。

福井斗真は落ち着いた様子を見せていたが、彼が自分を試しているだけかもしれない。彼女は信じられなかった。福井斗真と久保輝美が大学時代に何も起こさなかったなんて。

福井斗真が通っていた大学は、東京大学に劣らない名門校、慶應大学だった。

この大学は、世界中のトップクラスの教師陣を集め、最先端の教材や学習設備を備えていた。彼らの学校と比べると、東京大学はこれらのハード面ではやや見劣りしていた。

同様に、慶應大学も毎年福井グループに50人の人材を送り込んでおり、東京大学と同じだった。

この二つの学校は、ほぼ毎回比較対象として取り上げられていた。

安藤凪は、福井斗真のような人物がどこにいても話題に事欠かないことを知っていたが、彼の名前を検索しただけで千を超えるスレッドがあり、最新のスレッドが今日のものだったとは思わなかった。

彼女は「急急急」と書かれたそのスレッドを開いた。

【福井グループの福井社長がかつてこの学校の学生だったと聞きました。誰か福井社長の連絡先を知っている人はいますか?】

【期待しすぎだよ。それに福井斗真はもう何年も卒業してるし、たとえ誰かが彼のプライベート番号を持っていたとしても、きっともう変わってるよ】

【誰が持ってるか知ってるよ。学長が絶対持ってる。あなた、学長に聞いてみたらどう?】

【私は福井斗真の元クラスメイトだけど、ここで言っておくけど、私たちに聞いても分からないよ。福井斗真は学校にいた頃から姿を見せることが少なくて、彼の連絡先を持っている人はほとんどいなかったから】