第513章 久しぶり

安藤凪が言い終わると、鈴木湊の手から自分の腕を力強く引き抜き、振り返ってすぐに立ち去ろうとした。鈴木湊は当然、考えるまでもなく彼女を追いかけた。彼は足を引きずりながら、情け容赦なく背を向けて去っていく安藤凪の姿を見つめ、表情は憎悪に満ちていた。

彼が安藤凪に追いつきそうになった時、突然一人の人影が横から素早く歩み寄り、鈴木湊を遮った。彼は安藤凪と鈴木湊の間に立ち、その高い背丈で安藤凪をしっかりと守るように立ちはだかった。

安藤凪は突然ここに現れた男性を少し驚いて見つめた。男性はジンジャーイエローのオーダーメイドスーツを着こなし、艶のある革靴を履いていた。その筋肉質な背中は福井斗真に少し似ており、かすかに彼の身体から漂うジャスミンの香りを感じることができた。

この人物は安藤凪に非常に馴染み深い感覚を与えた。

鈴木湊は突然目の前に現れた邪魔者を見て、目を細め、低い声で脅した。「離せ、これは俺たち二人の問題だ、お前が口を出す必要はない」

「二人の問題？鈴木湊、これだけ年月が経っても、お前はまだガムのように粘着質だな。間違いなければ、安藤凪はもう結婚しているだろう。それなのにまだ追いかけ回すとは、もしかして男の小三になりたいのか？」

男性の穏やかな声色には、抑えきれない嘲りが満ちていた。

安藤凪と鈴木湊は思わず同時に固まった。目の前のこの男性は彼らを知っていた。鈴木湊はこの男性を上から下まで見渡したが、誰なのか思い出せなかった。安藤凪は男性の後ろから出てきて、彼の顔を見たとき、疑問から次第に驚きへと変わっていった。

そして安藤凪は、思わず彼を指さして驚いて口を開いた。

「林班長！」

「安藤凪、こんなに長い年月が経っても、君が私を覚えているとは思わなかったよ」

林班長は安藤凪が間違いなく自分を認識したことを聞いて、口元に笑みを浮かべた。彼は鈴木湊から手を離すと、ハンカチを取り出し、先ほど鈴木湊に触れた自分の手を丁寧に拭き取った。まるで何か汚いものに触れたかのように。

鈴木湊は顔を真っ赤にして怒った。安藤凪の呼びかけから、この男性が彼らのクラスの元班長だと認識した。しかし彼は卒業前に家族の事情で留学し、それ以来長い間消息不明だった。まさか彼が戻ってくるとは思わなかった。