第554章 人が揃った

傍にいて田中志峰と仲の良い同級生が、急に二回咳をして、田中志峰に下りる階段を示そうとした。

「田中志峰、お前酔っぱらってるんじゃないか、早く座れよ、謝るって何を謝るんだ、安藤羽音さんはもう何でもないって言ってるのに、お前はまだここで何をアピールしてるんだ、それに安藤凪さんと旦那さんの事に、お前が口出しして何になるんだ?お前に関係あるのか」

彼はそう言いながら、必死に田中志峰に目配せし、目がつりそうになっていた。

田中志峰は無意識に安藤羽音の方を見た。

安藤羽音は白い歯で唇を噛み、目尻が赤くなりながらも、彼に向かって冷静を装って微笑んだ。田中志峰は胸が締め付けられ、友人の言葉の意味など気にする余裕はなく、冷たく鼻を鳴らした。

「安藤羽音さんがあまりにも長い間虐げられてきたからだ。ネットのニュースは全部見たよ。安藤羽音さんもお前のお父さんの娘なのに、お前が自分勝手だからって、安藤グループを私物化したじゃないか。幸い安藤羽音さんは自分で頑張ったけどな」