第578章 承諾

鈴木湊の表情は一瞬崩れたが、すぐに自分の仮面を取り戻した。一方、山田嵐は何かに刺激されたかのように、爪を立てて再び安藤凪に飛びかかろうとした。

「全部あなたのせいよ!あなたが枕元で囁いたから!斗真が私との母子関係を断ち切ったのよ。よくもここで言えたものね!あなたが斗真と一緒にいるのは彼の財産が目当てなんでしょう。今、正体を現したわね。斗真が戻ってきたら、必ずあなたの本性を見抜くわ」

彼女の叫び声がオフィスに響き渡った。

安藤凪と山田嵐の間には高橋鐘一が立ちはだかっており、高橋は当然、山田が安藤に危害を加えることを許さなかった。そのとき、福井佳子が一歩前に出た。彼女は山田よりも冷静だったが、毒蛇のような恨みに満ちた目で安藤を見つめていた。

「あなたは母が親子関係を断たれたと言ったわね。じゃあ私は?私は兄の妹よ。兄の財産には私の取り分もあるはず。安藤凪、独り占めしようなんて思わないで。私のものは、一銭たりとも減らせないわ」