第577章 全員登場

「安藤凪、福井社長はあなたにこんなに良くしてくれているのに、福井社長が事故に遭ったからといって、社長の心血を注いだものを横取りするなんてことはできないよ。私たち年寄りは、ずっと見ているんだからね。」

これらの人々は、あれこれと言い合い、安藤凪が私利私欲のために代理社長を選ぶことに同意しないと決めたことを確信しているようだった。彼女は静かにこれらの人々の非難を聞きながら、笑いたくなるだけだった。

彼らの言うことは聞こえはいいが、福井斗真が戻ってきたら福井グループの社長の座は彼のものだと。もしそれが本当なら、福井斗真が事故に遭ったと知った時、最初の反応が代理社長を選ぶことではなかったはずだ。

彼らは一人一人、野心を顔に書いているようなものなのに、自分たちにこんな立派な理由を見つけて、もう半分は土に埋まりかけているような年齢の人たちが、まだこんな子供だましの話術を使っている。

自分はそんなに愚かに見えるのだろうか。

ちょうどその時、高橋鐘一が急いで入ってきた。彼は目の前の光景を見て一瞬戸惑い、言おうとしていた言葉を飲み込み、困惑して安藤凪を見た。

安藤凪は眉を上げ、皮肉っぽく言った。

「これらの株主たちは、斗真が事故に遭ったと知ると、とても親切に、会社と何の関係もないこの鈴木湊という男性を、会社の代理社長の地位に押し上げようとして、道徳的な高みから私が斗真の財産を欲しがっていると非難しているのよ。」

高橋鐘一は何が起こったのかを理解した。

彼は手で金縁の眼鏡を押し上げ、感情を一切見せずに鈴木湊を見た。「奥様は冗談を言っておられます。あなたは福井社長の合法的な妻であり、福井社長の財産はあなたの財産です。どうして自分の財産を欲しがるなどということがあるでしょうか。」

これらの株主たちは、怒りなのか恥ずかしさなのか、一人一人顔を真っ赤にした。伊藤会長は震える指で高橋鐘一を指さし、「高橋鐘一、お前は、斗真のそばにこれほど長くいながら、彼の会社が他人の姓を冠することを黙って見ているのか?」

「伊藤お爺さんはもうお年ですね、その手を見てください、パーキンソン病ではないですか。斗真が戻ってきたら、伊藤お爺さんに長期休暇を取らせて、ゆっくり病気を治すように言っておきますよ。」