第580章 お前は何様だ

突然の物音に、高橋鐘一は驚いて振り返り、ドアの方を見た。安藤玄が息を切らしてドアの前に立っていた。彼は片手でドアを支え、もう片方の手には牛革の封筒に入った書類を握りしめ、しばらくして息を整えてから中に入ってきた。

「姉さん、頼まれたものを持ってきたよ。これで合ってる?」

安藤玄は牛革の封筒を安藤凪の前に差し出し、荒い息で言った。彼はこの道のりを一刻を争うように全力で走ってきて、姉の用事に遅れないようにと必死だった。ようやく休憩できると、近くの椅子を引き寄せ、干物のように椅子に崩れ落ちた。

安藤凪は気遣いから安藤玄にぬるま湯を一杯注ぎ、そして牛革の封筒から中身を取り出して一目見た後、彼に向かってうなずいた。

「これだわ。玄くん、ありがとう。間に合ったわね。高橋さん、私はこれを待っていたの。これで揃ったから、行きましょう」