第584章 終わり

「何が不可能なことがあるの?斗真はいつも妻を甘やかすタイプだから、私が何度断っても、彼はどうしても私にあげたいと言って、一生私のために働くと言うのよ。私にどうしろっていうの」

安藤凪は片手で頭を支え、人を殺しても償いきれないような言葉を口にした。隣にいた高橋鐘一でさえ、福井社長が自分の株式の40パーセントを奥様に譲ったことを知らなかったが、冷静に考えると、それも当然のことのように思えた。結局のところ、福井社長の「妻溺愛魔王」という呼び名は伊達ではないのだから。

鈴木湊は両手で書類をしっかりと握りしめ、60パーセントという数字を不満げに見つめていた。

彼はこの書類を粉々に引き裂きたいほど悔しかった。あと少し、ほんの少しで自分が夢見ていた地位に就けるところだったのに、なぜ神様は自分をこんな風に弄ぶのか?