第583章 喜びすぎた

鈴木湊は忍耐強く取締役たちを見つめ、書類を一つ一つ確認した後、ようやく口を開いた。「私はすでに会社の株主になっているので、無関係な人間ではありません。代理社長に立候補することに問題はないでしょう」

「たった1パーセントの株式で、よくもそんな大それたことが言えるな」田中社長の声には相変わらず軽蔑の色が満ちていた。鈴木湊の表情は曇り、彼は顔を安藤凪の方に向けた。「凪、安藤社長、書類に問題がないなら、続けてもいいですか」

安藤凪は鈴木湊の目の奥に潜む殺気を感じ取った。彼の今の落ち着きと安定した態度は、ただの偽りの外見に過ぎないことを知っていた。

鈴木湊という人物は緻密な思考の持ち主で、非常に恨みを忘れない。おそらく彼の心の中では、代理社長の座に就いたら、今日反対意見を持った株主たちをどう処分するか、すでに計算済みなのだろう。

この手の人間は是非をわきまえず、たとえ福井グループの代理社長の座に就いたとしても、視野が狭すぎる。しかし幸い、福井斗真には先見の明があった。

「もちろんです」安藤凪はうなずいた。「では先ほどの議題に戻りましょう。鈴木湊を福井グループの代理社長にすることに賛成の方は挙手をお願いします」

彼女の言葉が終わるや否や、伊藤取締役が急いで手を挙げた。続いて、他の人々もまばらに手を挙げ始めた。安藤凪は一周見回した。良し、8人だ。

これらの株主が誰なのか、安藤凪は一人一人心に留めていた。

鈴木湊の口元は抑えきれずに上へと曲がった。安藤凪は、もし今がそのタイミングでなければ、鈴木湊はきっと立ち上がって受賞スピーチを始めるだろうと思った。こんなに落ち着きがないとは、鈴木湊はますます幼くなっていくようだ。

安藤凪は鈴木湊への皮肉を押し殺し、続けて尋ねた。「はい、皆さん手を下ろしてください。では、鈴木湊を福井グループの代理社長にすることに反対の方は挙手をお願いします」

田中社長を筆頭に6人が手を挙げた。

残りの6人は中立の立場を取った。6対8、一見すると鈴木湊の大勝利のように見える。田中社長の顔色は青ざめ、もし安藤凪がここにいなければ、きっと袖を払って退出していただろう。

「皆さんのご支持に感謝します。期待を裏切らないよう努めます」

鈴木湊は立ち上がり、そう言いながら主席の方向へ歩き始めた。