第595章 彼女に残されたもの

安藤凪は透明な袋越しに、中に牛皮の封筒のようなものが入っているのが見えた。それは鈴木湊が言っていた、母親が自分に残した手紙のはずだ。もう一つは小さな試験管で、中に二つの白い錠剤が入っていた。

彼女はその二つの錠剤を見たとき、表情が微かに変わった。もし間違いなければ、これは母親の薬のはずだ。もしかしてこれに何か問題があるのだろうか?

安藤凪は少し震える手でボディガードから物を受け取り、そして無理に笑顔を作って言った。「今日は本当にお疲れ様でした。どうぞ休んでください」

「私たちは疲れていません。それに奥様、これらを手に入れた後、鈴木湊にお仕置きをしてきました。ご安心ください、彼はしばらくの間、二度と無礼にもあなたの前に現れることはないでしょう」

ボディガードは真面目な顔で安藤凪に言った。

安藤凪は一瞬驚いた。ボディガードが鈴木湊を殴ったのか?

安藤凪は目の前の二人の筋骨隆々としたボディガードを見て、そして鈴木湊のやや痩せた体格を思い出し、急に気分が良くなった。「給料を上げましょう」

彼女の口角は思わず上がった。鈴木湊が自分の前に現れないというのは、今の数少ない良いニュースだった。ボディガードが去った後。

安藤凪はようやく慎重に透明な袋を開けた。彼女はそのガラスの試験管を取り出し、中の二つの白い錠剤を見た。錠剤の上には小さな丸で「a」と書かれており、彼女の推測が正しいことを証明していた。この二つの錠剤は、確かに母親が病院にいた時に飲んでいた薬だった。

母親がわざわざ薬を残したのは、自分に何かを伝えたかったのだろうか。

彼女は試験管を握る手をだんだんと強くした。母親の突然の死と、この錠剤には何か関係があるのだろうか。母親が自分に残したのは、本当にこの二つの錠剤だけなのか。もっとたくさんあって、鈴木湊がすでに取り出して検査に出したのではないか。そして検査結果はどうなのか?

安藤凪は、自分はいつか機会を見つけて、本当に鈴木湊の家をしっかり探し回るべきだと思った。

彼女がぼんやりしている時、家庭医がやって来た。家庭医はまず安藤凪に簡単な検査をし、それから言った。

「奥様、あなたはこの期間、睡眠不足に加えて考え事が多く、きちんと食事をしていないため、体のさまざまな機能に不調が生じています。この期間はしっかり休息を取るようにしてください」