「うん、お母さんが私に残した手紙だけど、鈴木湊に持ち去られたの。今日までその存在を知らなかったわ。さっき……」
安藤凪は声を詰まらせながら、さっきの出来事を話した。
安藤玄は青筋を立て、バンと手紙を机に叩きつけ、歯を食いしばって言った。
「なるほど!だから姉さんは僕の存在を知らなかったのに、鈴木湊は知っていて、田舎で僕を見つけることができたんだ。彼がお母さんが姉さんに宛てた手紙を隠していたからだ。もし今回、姉さんに弱みを握られなかったら、彼は永遠に手紙を渡すつもりはなかったんだろう」
安藤凪は目を伏せた。彼女も同じように考えていた。鈴木湊の卑劣さは言語道断だった。今彼女が最も心配しているのは、母親が自分に残した薬が、この二錠だけなのか、それとも他にもあるのかということだった。