「ただ名義上の仕事を手配してくれればいいんです。いつでも福井グループに出入りできるようにしてくれれば。私は盛世グループの株主ではありますが、基本的な職業倫理は持っています。この立場を利用して福井グループに不利なことをするようなことは絶対にしません」
鈴木湊は真面目な顔で言った。
安藤凪は思わず目を回した。鈴木湊は本当に自分を馬鹿だと思っているのだろう。彼がこれほど苦心して福井グループに入ろうとしているのは、利益を得ようとしているのでなければ、自分の名前を逆さまに書いてもいい。
「二つの会社、それも敵対する会社の重要なポジションを兼任できるなんて聞いたことがないわ」
安藤凪は冷たい言葉で皮肉った。
「鈴木湊、あなたは伊藤取締役と仲がいいんじゃないの?伊藤取締役はあなたに1パーセントの株を売ってくれたんでしょう。伊藤取締役に福井グループで仕事を手配してもらえばいいじゃない。わざわざ私に頼む必要ある?」