第607章 私たちの子供

「夕子は楽しく過ごしていて、たくさんのお友達が夕子と遊んでいるの。遥くんと陽翔ちゃんは、二人とも夕子と同じ席に座りたがっていたの。最後はテストの席順で遥くんが夕子と同じ席になって、陽翔ちゃんは泣いちゃったけど、夕子がキャンディをあげたら泣き止んだの」

藤原夕子は目をパチクリさせながら、甘い声で言った。安藤凪はそれを聞いて、苦笑せずにはいられなかった。小さな子はやはり人気があるようだ。いじめられていなければ、安藤凪も安心できた。

安藤凪はすぐに家に帰らず、藤原朝陽を迎えに行くことにした。藤原朝陽は小学校に通っていて、藤原夕子の学校からは少し距離があった。しかし、藤原朝陽の下校時間は5時半で、藤原夕子の下校時間とは1時間の差があるため、十分に間に合うはずだった。

彼女が藤原朝陽の学校の門に着いたとき、朝陽の下校まであと20分ほどあった。朝陽の最後の授業は体育のようで、安藤凪は柵越しに体育の授業を受けている藤原朝陽を見つけた。しかし…

安藤凪は他の子どもたちが二人一組になっているのに、藤原朝陽だけが一人でいることに気づいた。他の人たちはそれを当たり前のように見ていた。確かに、クラスの人数が奇数なら、誰か一人は一人で練習することになるだろう。

しかし安藤凪が5分間観察していると、その間誰一人として藤原朝陽に話しかける子がいないことに気づいた。少し太った男の子が、ずっと藤原朝陽の方向に石を投げていた。体育の先生はそれを見ても、眉をひそめるだけで何も言わなかった。

藤原朝陽も反応せず、まるでそれに慣れているかのようだった。

安藤凪は胸が痛んだ。藤原夕子と比べると、藤原朝陽は兄として年齢が上なせいか、行動や言葉遣いがいつも大人びていて、彼らが心配する必要はなかった。安藤凪は藤原朝陽が学校でうまくやっていると思っていたが、今見る限りではそうではないようだ。

「きれいなお姉さん、どうしてみんなはお友達と遊べるのに、お兄ちゃんは一人なの？」藤原夕子も同じ光景を見ていたが、小さな子どもはこれが子どもたちの間の一種の冷たいいじめだとは全く理解していなかった。彼女は目をパチクリさせながら、好奇心を持って安藤凪を見上げた。