第616章 書斎で寝る

福井おじさんが自分を責めていないと聞いたものの、藤原朝陽はまだ少し不安げに振り返って安藤凪を見た。

安藤凪はこの時、手を伸ばして、わざと藤原朝陽の小さな頭をくしゃくしゃと撫でた。もともとはおとなしく頭皮にぴったりとくっついていた黒髪が、摩擦による静電気のせいで、ボサボサと逆立った。藤原朝陽は呆然とした表情で安藤凪を見つめ、じっとして彼女に自分の髪を弄られるままにしていた。

普段は大人びた藤原朝陽が、安藤凪の手の下で弱くて無力な可哀想な子供に変わった。安藤凪は思わず「プッ」と声を出して笑ってしまった。

「子供なんだから、そんなにたくさん考えることないわよ。あなたが私を無理やり学校探しに連れて行けるわけないでしょう。福井おじさんだって道理のわからない人じゃないわ。いい子だから、あなたはただ勉強を頑張って、楽しく成長すればいいのよ」

藤原朝陽は安藤凪の笑顔を見て、なぜか心が随分と軽くなった。彼はしっかりとうなずいた。「うん!」

「朝陽、二階に行って弟が起きたか見てきてくれる?」安藤凪は小さな子がようやくこの件にこだわらなくなったのを見て、少し赤ちゃん肌の残る彼の頬をそっと摘んで言った。

藤原朝陽は承知して二階へ上がっていった。

……

安藤凪は藤原朝陽の小さな姿が見えなくなると、両腕を胸の前で組み、冷たく鼻を鳴らして福井斗真を見た。

「よく言うわね、今日私の体調が悪いのは誰のせい!今日子供たちと学校を見に行く予定だったのを知っていたくせに。福井斗真、あなたの精力が旺盛すぎるわ。今夜はリビングで寝なさい!」

彼女の数言で、福井斗真の表情はみるみる崩れていった。

「凪ちゃん、悪かった」福井斗真は素早く謝った。彼は言いながら安藤凪の前に座り、長い腕を伸ばして彼女を抱き寄せようとしたが、安藤凪は体を横に動かして避け、明らかに許す気はなかった。

福井斗真は軽く咳払いをした。普段は高みにあって、一言で企業の生死を決めるこの男が、安藤凪の手を取り、誠実に反省の言葉を述べた。

「凪ちゃん、本当に悪かった。ソファで寝るのはやめてくれないか。僕は寝床に慣れないと、一晩中眠れなくて、翌日の仕事に絶対影響するんだ」

寝床に慣れない?一晩中眠れない?