福井おじさんが自分を責めていないと聞いたものの、藤原朝陽はまだ少し不安げに振り返って安藤凪を見た。
安藤凪はこの時、手を伸ばして、わざと藤原朝陽の小さな頭をくしゃくしゃと撫でた。もともとはおとなしく頭皮にぴったりとくっついていた黒髪が、摩擦による静電気のせいで、ボサボサと逆立った。藤原朝陽は呆然とした表情で安藤凪を見つめ、じっとして彼女に自分の髪を弄られるままにしていた。
普段は大人びた藤原朝陽が、安藤凪の手の下で弱くて無力な可哀想な子供に変わった。安藤凪は思わず「プッ」と声を出して笑ってしまった。
「子供なんだから、そんなにたくさん考えることないわよ。あなたが私を無理やり学校探しに連れて行けるわけないでしょう。福井おじさんだって道理のわからない人じゃないわ。いい子だから、あなたはただ勉強を頑張って、楽しく成長すればいいのよ」