安藤凪は胸が締め付けられ、必死に自分を抑えて叫び声を上げないようにした。今の福井斗真は、まるでテレビの恐怖映画の登場人物のようだった。よく見ると、スクリーンの白い光が福井斗真の顔に当たり、それが彼の顔色をこんなに悪く見せていたのだと気づいた。
彼女がほっと一息ついたとき、大画面に龍が現れ、すぐに映画が始まった。オープニング曲は不気味な唸り声を伴い、そよ風と相まって、安藤凪は誰かが自分の耳元で息を吹きかけているような気がして、腕の産毛が逆立った。
頭の中に「ホラー映画」という三文字が定着すると、安藤凪は勝手に想像を膨らませてしまう。そのとき、福井斗真が突然近づいてきた。「凪ちゃん、ポップコーン食べる?」
安藤凪は小さく驚きの声を上げ、体を後ろに反らせた。周囲の大画面からの背景音が彼女の驚きの声を覆い隠した。福井斗真は何か悪いことをしたかのように、「凪ちゃん、ごめん、驚かせたかな?」と言った。
「い、いいえ、今何て言ったの?」安藤凪は我に返り、自分の反応が大げさだったと感じた。彼女は深呼吸をして、乱れたドーパミンを平均値に戻した。
「ポップコーン、どうして食べないのかと聞いたんだ」福井斗真は安藤凪の異変に気づかないふりをして、もう一度尋ねた。
安藤凪は腕の中のポップコーンを見て、機械的に頷いた。「そう、ポップコーン、食べるわ」彼女はそう言いながら、一握りつかんで自分の口に運んだ。
しかし映画の冒頭から視覚的衝撃があり、五官のない顔が突然大画面に現れ、無限に拡大された。安藤凪の手からポップコーンがバラバラと箱に落ち、周囲から驚きの声が上がった。
それはほんの始まりに過ぎず、その後のストーリーはますます異常で恐ろしくなり、安藤凪はすっかり怖気づいていた。主人公の女性がベッドから身を乗り出し、ベッドの下を覗き込んだとき、口角が耳まで裂け、目から血を流している男と目が合った瞬間。
安藤凪は周りを気にせず、福井斗真の胸に飛び込んだ。彼女の体は制御できないほど震え、抱えていたポップコーンの箱は潰れ、すすり泣くような声を上げた。
福井斗真は安藤凪が怖がることは予想していたが、ここまで怖がるとは思っていなかった。彼女が自分の胸で震えている姿を見て、福井斗真は言葉にできないほど心を痛めた。彼は片手で安藤凪の頭を支え、なだめるように撫でた。