第653章 驚き

安藤凪は目を見開いた。その丸い目には、信じられないという表情が満ちていた。鈴木湊はぐっと言葉に詰まり、「ここで適当なことを言わないでくれ。何がガラクタだ、あれは我が社が用意した優良品だ」と言った。

「優良?」安藤凪はまるで冗談を聞いたかのように言った。「優良品だって?あなたたちの盛世グループが他国の貿易会社と五分五分で分けるなんて、それって他人にお金を渡しているようなものじゃない?あなたがそんなに愚かだとは思えないけど、もしそうなら、私が何も言わなかったことにしておくわ」

鈴木湊は安藤凪に言い返せず、ただ自分の中で怒りを募らせるしかなかった。

彼はあの時、Sグループの甘い言葉を信じてしまい、福井グループが五分五分という好条件でSグループと契約したいと思っていると本気で思い込んでいた。彼は当時、福井斗真を出し抜きたいという一心から、調査もせずに自主的に契約を結んでしまった。

契約後になって初めて、これが全て詐欺だったことを知った。福井グループは実際にはSグループの五分五分の分配に同意していなかったのだ。自分だけが愚かにも契約してしまい、そのため盛世グループの社長は彼に対して激怒した。しかし契約はすでに結ばれていたため、渋々受け入れるしかなかった。

彼が契約したことなので、この件は彼が全責任を負うことになった。鈴木湊は自分の判断で、本物と偽物が混ざった商品を佐藤東たちに納品し、売れてしまえば彼らも異常に気づかないだろうと賭けたのだ。

今、自分の思惑がばれて、鈴木湊はもちろん動揺していた。

それでも彼は頑固に認めようとしなかった。

「我が社は常に良心的な企業だ。当然、契約通りに適格な製品を納品する。安藤さん、もし証拠もなく我が社の納品した製品がガラクタだと言うなら、名誉毀損で訴えるぞ」

鈴木湊は首を突き出して安藤凪を見つめた。安藤凪はそれを見ても鈴木湊と議論せず、肩をすくめて「好きにすれば。あなたが適格だと言うなら、適格なんでしょう」と言った。

彼女の無関心な態度に、鈴木湊は綿に拳を打ち込んだような感覚を覚え、息が喉に詰まって上にも下にも行かなかった。