馬場文香の顔に一瞬の戸惑いが走った。
「三井先生の言うとおりです。でも秋田結は佐藤先生の弟子で、佐藤家という後ろ盾があります。彼女が本当に参加するなら、私には止められません」
「……」
三井愛はこの馬場文香が本当に馬鹿だと思った。
言いたいことがあっても、はっきりとは言えない。
でも遠回しに言っても、この馬場文香には通じないようだ。
携帯の着信音が鳴り、彼女は電話に出た。
馬場文香も三井愛の不機嫌さに気づいたようだ。
三井愛が電話に出るのを見て、彼女は立ち上がり、トイレに行くと言った。
トイレの中。
秋田結は草場盟子が出てくるのを待っていた。
一人は鏡の前に立ち、もう一人は個室に座っていた。
ドアを隔てて会話をしていた。
馬場文香はちょうどその時に入ってきた。
秋田結を見ると、まるで仇敵に会ったかのように、彼女の目に軽蔑の色が浮かんだ。