第155章 上野卓夫の病、そして彼が好きな人…

「薬を飲むのは対症療法であって、根本的な治療ではない。」

白衣の外国人医師はあまり賛成していない。

上野卓夫という患者はあまりにも偏執的で、言うことを聞かない。

いつも治療に協力しようとしない。

これまで何年もの間、彼が治療に協力したのは三回に満たない。

彼に職業倫理があり、また慈悲深い心があるからこそ、彼の好きにさせているのだ。

「今は時間がないんだ。もう少し経ってから、手元の仕事が片付いたら、治療に協力するよ。」

上野卓夫の伏せられた瞳の色は暗く沈んでいた。

もしここで半月治療を受けたら、彼と三井康隆との一ヶ月の期限が来てしまう。

彼はまず本当の墓荒らしの犯人を突き止めなければならない。

秋田結を装っているあの女を引きずり出さなければならない。

「君はいつも忙しいことがあるね。このままでは、いつか君の周りの人を傷つけることになるんじゃないかと心配だよ。」