第162章 彼女は彼らの感情の証人

三井愛と上野卓夫の4枚目の写真。

中学1年生の時、秋田結が自分のオーディションの役を奪い取り、彼女が芸能界に足を踏み入れた最初の仕事だった。

撮影場所は学校の近くの通りで、下校途中の彼女はちょうどそれを目にした。

彼女は自嘲気味に笑った。

三井愛と上野卓夫の間の「感情的な事」について自分はあまりにも多くを知っていた。

当然、三井愛が自分を目の上のたんこぶ、肉中の棘と見なすわけだ。

しかし、彼女はすでに二人がいるあらゆる場所を避けるよう努力していた。

三井家にさえ、帰らなくて済むなら帰らないようにしていた。

視線は5枚目の写真に落ちた。

秋田結の目の前に浮かんだのは、自分に向かって吠えながら突進してくる大きな狼犬だった。

それは三井愛が入念に計画したものだった。

彼女はその時、全く無防備で、路地から飛び出してきた狼犬に驚いて本能的に前へ逃げ出すしかなかった。