第183章 私は病気だ、あなたに治してほしい

秋田結は振り返り、彼女に向かって歩いてくる伊藤明史を見て、繊細な眉と目が思わず冷たくなった。

手の中の携帯電話はまだ通話中だった。

電話の向こうの上野卓夫は伊藤明史の声をはっきりと聞いていた。

「結ちゃん、電話の邪魔をしてしまったかな?」

伊藤明史の視線は彼女の手の中の携帯電話を見てから、微笑みながら彼女の目を見た。

「そうよ。」

秋田結は冷たく一言吐き出した。

伊藤明史の顔に謝意が浮かんだ。「すみません、さっきは電話中だとは知らなくて……今通話が終わったなら、話してもいいかな?」

「……」

秋田結は自分の携帯電話を見下ろした。

すでに切れていた。

上野卓夫がいつ切ったのかわからない。

彼女は通話時間の記録に目を留め、心臓の辺りにあるかすかな違和感が消えるまで待った。