青雲音。
秋田結は外から戻ってきてから、ずっと席に座ったまま呆然としていた。
透明なガラス越しに、草場盟子は紙を丸めて、隣でヘッドホンをつけて音楽を聴いている雲井洋治に投げた。
彼はヘッドホンを外し、不思議そうに見てきた。
草場盟子は彼に合図を送り、中にいる秋田結を見るように促した。
雲井洋治は驚いて振り返り、秋田結がスマホを見つめて呆然としているのを見た。
「どれくらい?」
雲井洋治は小声で尋ねた。
草場盟子は二本の指を立てた。
「彼女に何があったのか聞いてきて?」
「わかった」
草場盟子は立ち上がり、秋田結のデスクに歩み寄り、心配そうに声をかけた。「結ちゃん」
あまりにも物思いに耽っていた秋田結は、突然の声に驚いて手のスマホをデスクに落としそうになった。
彼女はまばたきをして、デスクに身を乗り出した草場盟子の質問を聞いた。「結ちゃん、戻ってきてからずっとスマホを見つめてるけど、ページもめくらないでずっと見てるの。何を見てるの?」