廊下の空気が抜け去ったかのようだった。
上野卓夫は薄い唇を固く閉じ、冷たい身体は硬直していた。
秋田結からのメッセージを二度読み、返信を編集しようとしたとき、数メートル先のエレベーターから三井忠誠の声が聞こえてきた。「卓夫。」
上野卓夫は目の奥の感情を隠した。
振り向くと、自分に向かって歩いてくる三井忠誠が見えた。
「上野お婆さんの状態はどう?」
三井忠誠は近づくと、心配そうに尋ねた。
「変わらないよ。」
上野卓夫の声は冷たく、全身から無関心さが滲み出ていた。
三井忠誠は目を伏せて尋ねた。「ネット上の投稿を削除したのは君か?」
「何の投稿だ?」
上野卓夫は冷淡に片眉を上げた。
三井忠誠は言葉に詰まり、顔色が沈んだ。
彼の声にも硬さが混じった。「卓夫、僕たちはこれだけ長い付き合いなのに、そんな態度を取る必要があるのか?」