第208章 彼女の家へ

西村千花は「ああ」と声を出し、横向きにエレベーターに入った。

数歩歩き出した。

秋田結は振り返って閉まったエレベーターのドアを見た。

病室には三井愛一人だけで、三井忠誠と三井康隆はまだ会社で仕事中だった。特別看護師もいなかった。

ドアが開く音を聞いて、三井愛は顔も上げずに尋ねた。「まだ何か用?」

秋田結は軽く笑い、ドアを閉めて彼女に向かって歩き出した。「あなたに会いに来たのだから、もちろん用事があるわ。」

その声を聞いて、三井愛は素早く顔を上げ、秋田結を見ると、その表情はたちまち軽蔑に変わった。「秋田結、私の携帯を捨てたくせに、よくここに来れるわね。」

秋田結は眉を上げ、にこにこと言った。「考えてみたら、あなたが気にしているのは携帯じゃなくて、あなたと恋人との思い出なんだと思ったの。だから、埋め合わせに来たわ。」