第250章 誤認、すれ違い(2)

上野卓夫は「あなたの命の恩人は結ちゃんであって、私ではない」と言った。

「お姉ちゃん?」

渡辺由梨は目を大きく見開き、困惑した様子で上野卓夫を見つめた。

上野卓夫はうなずき、細長い瞳に珍しく温かみが宿った。「結ちゃんがあなたの住所を教えてくれたから、天満徹を行かせたんだ」

渡辺由梨は理解できずに「でも、お姉ちゃんがどうやって私のことを?」と尋ねた。

渡辺由梨の携帯電話が鳴った。

三井忠誠からの電話だった。

彼女が上野卓夫に叱られるのではないかと心配していた。

「お兄ちゃんからよ」

「出ていいよ」

上野卓夫はそれ以上説明せず、先に立ってリビングへ向かった。

上野お婆さんは上野卓夫と渡辺由梨が出てくるのを見るとすぐに心配そうに尋ねた。「結ちゃん、卓夫はあなたに謝ったかい?」