三井美咲はエレベーターの前に歩いていくと、ちょうどエレベーターのドアが開いた。
エレベーターから白いセーターとジーンズを着た小さな女の子が出てきた。
彼女を見ると、目に喜びの光が輝き、甲高い声で叫んだ。「秋田おばさん、今来たの?」
小さな女の子はそう言いながら、手を伸ばして三井美咲を引っ張ろうとした。
三井美咲は本能的に一歩後ろに下がり、小さな女の子を避けた。
小さな女の子の目に一瞬の戸惑いが浮かび、また尋ねた。「秋田おばさん、知心は一緒に病院に来なかったの?」
「うん、来てないわ。」
「じゃあ、秋田おばさんは知心のお婆さんに会いに行くの?」
「うん。」
「私も一緒に行ってもいい?ママが言ってたよ、上野おじさんは私の命の恩人だって。」
この小さな女の子は、藤原路子だった。