主寝室のドアを開けると、秋田結はしばらく呆然としていた。
部屋の中の様子は、3年前と何も変わっていなかった。
ベッドのシーツセットの色さえ、以前と同じだった。
彼女はウォークインクローゼットに入り、クローゼットを開けて上野卓夫のシャツを一枚取った。
出ようとしたとき、何かに導かれるように、隣のクローゼットの取っ手を引いた。すると中には女性用の服が整然と掛けられているのが見えた。
全て新品で、タグもまだ付いたままだった。
「これらの服は君のために用意したものだ」
男性の低く磁性のある声がクローゼットの外から聞こえてきた。
秋田結はクローゼットの取っ手を握る手が震えた。
振り向くと、上野卓夫の長身の姿がそこに立っていた。
逆光で彼の表情はよく見えなかったが、彼の視線の熱さだけは感じ取れた。