第360章 呆然とする間に、彼のキスが降りてきた

「姉さん、お手洗いに行くけど、一緒に行かない?」

三井美咲は一瞬だけ目に浮かんだ感情を隠し、笑顔で秋田結に尋ねた。

秋田結は立ち上がり、「いいわ」と答えた。

二人は個室を出て、お手洗いへ向かった。

個室の中。

上野卓夫はだらしなく笑い、水杯を持ち上げて一口飲んでから、冷ややかに口を開いた。「三井美咲を振るなら、結ちゃんを巻き込むな」

「どこの目で俺が結ちゃんを巻き込もうとしていると見た?」

伊藤明史の表情が変わり、嫉妬の色が目に浮かんだ。

彼は自分が上野卓夫より劣っているとは思ったことがなかった。

もし当時、三井愛を利用して彼女との結婚を強いられなければ、結ちゃんと別れることもなかっただろう。

そして彼女の心を傷つけ、心の扉の外に追いやられることもなかった。

「もちろん両目でしっかり見たさ」