秋田結はちょうど考えていた、どんな機会を見つけて、もう一度三井家に行こうかと。
そのとき、三井忠誠から電話がかかってきた。
「結ちゃん、あの夜は食事もせずに帰ってしまったね。今夜は父が接待で家に帰って来ないから、時間ある?仕事終わりに迎えに行ってもいい?」
「今夜はダメ、約束があるの」
秋田結は断った後、もう一言付け加えた。「何かあった?」
「特に何もないよ、ただ一緒に食事でもと思って」
三井忠誠は確かに自分を卑屈な立場に置いていた。以前の行動を悔いる彼は、秋田結に償いたいと思っていた。
「また今度にしましょう」
「わかった」
「今度はあなたが一人で家にいる時に行くわ」
秋田結は三井康隆に会いたくないという意思を直接表明した。
三井忠誠はそんなことは気にしていなかった。秋田結が彼と接触してくれるだけで、すでに満足していた。