第370章 あの年の初雪、夕暮れの中から現れた少年

【今年の初雪だけど、私が行って一緒に見る?それともあなたがこっちに来る?】

秋田結が振り向くと、上野卓夫が彼女の家のバルコニーに立っていた。

手に持った携帯で彼女を撮影していた。

彼の長身はだらりと壁に寄りかかり、優雅で気品があるように見えた。

彼女は一瞬ぼうっとした。

何年も前、あの初雪の日の清々しい少年の姿が、ふと目の前に浮かんだ。

彼女は意識して記憶しようとしたわけではなかった。

しかし何年経っても、当時の光景は昨日のことのように鮮明だった。

中学2年生のあの冬、隣の席の子が言った。初雪の日に好きな男の子と一緒にいれば、永遠に一緒にいられるって。

彼女はその時、ただ聞き流していた。

自分には関係のないことだと思っていた。

放課後、いつものように歩いて30分かけて佐藤家に向かった。