【今年の初雪だけど、私が行って一緒に見る?それともあなたがこっちに来る?】
秋田結が振り向くと、上野卓夫が彼女の家のバルコニーに立っていた。
手に持った携帯で彼女を撮影していた。
彼の長身はだらりと壁に寄りかかり、優雅で気品があるように見えた。
彼女は一瞬ぼうっとした。
何年も前、あの初雪の日の清々しい少年の姿が、ふと目の前に浮かんだ。
彼女は意識して記憶しようとしたわけではなかった。
しかし何年経っても、当時の光景は昨日のことのように鮮明だった。
中学2年生のあの冬、隣の席の子が言った。初雪の日に好きな男の子と一緒にいれば、永遠に一緒にいられるって。
彼女はその時、ただ聞き流していた。
自分には関係のないことだと思っていた。
放課後、いつものように歩いて30分かけて佐藤家に向かった。