第399章 何年も後の賭け

「上野さん？」

秋田結は上野卓夫の異変に気づいた。

彼女は眉をひそめ、彼がグラスを握りしめて青白くなった指から視線を移した。

小さな顔を少し傾けて、彼の氷のように冷たい顔を見つめた。

数秒待ったが、上野卓夫は彼女に応えなかった。

秋田結は不思議と以前、上野お婆さんが彼女に話してくれた、上野卓夫が子供の頃に誘拐されて戻ってきた後、しばらく医者にかかっていたことを思い出した。

彼女の心は少し沈んだ。

もう一度、優しい声で呼びかけた。「上野さん？」

上野卓夫は自分の感情をコントロールしようとしているようだった。秋田結はやはり心配になって手を伸ばした。

彼の水の入ったグラスを握る大きな手に、そっと自分の手を重ねた。

おそらく彼女の手のぬくもりが上野卓夫の感情を取り戻させたのだろう。彼は伏せていた目を突然上げ、彼女を見た。