第412章 空気の中で、曖昧さが蔓延する…_2

実は、別れたくなかった。

秋田結はまばたきをした。

柔らかな光の下、肌は白磁のようで、「じゃあ、後に延ばそう」と言った。

彼女の声は柔らかく、少し怠惰な響きを帯びたその言葉は、特に心をくすぐった。

上野卓夫が口を開く前に、彼女はまた言った。

「私は寝るわ、あなたが出るときはドアを閉めてね」

秋田結がドアを開けようとした瞬間、上野卓夫に手首を掴まれた。

「結ちゃん」という少しかすれた声が鼓膜に入ってきた。

彼女は目を伏せ、自分の手首を掴む彼の指を見た。骨格がはっきりとして、熱い温度を持っていた。

心拍が、ふと一拍遅れた。

「何かあるの?」

言葉を発すると、彼女は目を上げた。

ちょうどその時、男性が身を屈めてきた。

秋田結の呼吸が止まった。

後頭部が彼のもう一方の大きな手に掴まれ、キスが電流のように心臓を撃った。