実は、別れたくなかった。
秋田結はまばたきをした。
柔らかな光の下、肌は白磁のようで、「じゃあ、後に延ばそう」と言った。
彼女の声は柔らかく、少し怠惰な響きを帯びたその言葉は、特に心をくすぐった。
上野卓夫が口を開く前に、彼女はまた言った。
「私は寝るわ、あなたが出るときはドアを閉めてね」
秋田結がドアを開けようとした瞬間、上野卓夫に手首を掴まれた。
「結ちゃん」という少しかすれた声が鼓膜に入ってきた。
彼女は目を伏せ、自分の手首を掴む彼の指を見た。骨格がはっきりとして、熱い温度を持っていた。
心拍が、ふと一拍遅れた。
「何かあるの?」
言葉を発すると、彼女は目を上げた。
ちょうどその時、男性が身を屈めてきた。
秋田結の呼吸が止まった。
後頭部が彼のもう一方の大きな手に掴まれ、キスが電流のように心臓を撃った。