第417章 私にキスして……

上野卓夫はあの伊藤明史を嫉妬で狂わせる言葉を言い終えると。

彼の返事を待たずに、秋田結の手を取り、指を絡ませながらビルを出た。

秋田結は彼に非常に協力的で、伊藤明史の前では。

まるで彼らが本当に付き合っているかのように。

これで上野卓夫の気分は大いに良くなり、口元には楽しげな弧を描き、気品があり格好良かった。

後ろのホールでは。

伊藤明史が硬直したまま立っていた。

体の横に下ろした両手は拳を強く握りしめ、上野卓夫と秋田結が去っていく背中を見つめていた。

何度か深呼吸をして、ようやく心の中の感情を落ち着かせた。

無言で言った、「結ちゃん、いつか必ず、君は僕のもとに戻ってくる」

おそらく、三井美咲の言う通りだろう。

伊藤明史の秋田結に対するいわゆる深い愛情や愛は、より多くは、彼の諦めきれない気持ちから来ているのだ。