「今夜出発する。」
「わかった、こちらで協力する。」
「了解。」
電話の向こうの人間は、伊藤明史の「協力」が何を意味するのか理解していた。
彼は気を失っている秋田結を見下ろした。伊藤明史は知らないだろう、彼の駒が彼の言うことを聞いていないことを。
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三井美咲は川島おばさんの車で伊藤明史が言ったスイーツショップへ向かった。
伊藤明史は窓際の席に座っていて、三井美咲が入るとすぐに彼を見つけた。
彼女は感情を抑え、女優としての演技力を発揮し、片手でバッグの紐を握りしめながら、伊藤明史に向かって歩いていった。
窓際で、伊藤明史は立ち上がり、近づいてくる「秋田結」を見つめた。
彼の眼差しは優しくなった。
彼女が近くまで来ると、彼は紳士的に椅子を引き、自分のバラの花を差し出した。