森川萤子は浴槽に横たわり、片桐陽向が気遣って閉めてくれた浴室のドアの向こうで、長く息を吐いた。冷たく湿った体が温まり始めるのを感じた。
お湯が体を包み込み、彼女の両足はゆっくりと感覚を取り戻し始めた。針で刺されるようなチクチクとした痒みが毛穴から爆発するように広がり、頭はますますぼんやりとしてきた。
森川萤子が10分ほど浸かっていると、突然ドアをノックする音が聞こえ、片桐陽向の声が耳に入ってきた。「着替えはドアの外の椅子に置いておくから、長く浸かりすぎないように」
「あぁ...わかった」森川萤子は返事をした。
ドアの外の足音が遠ざかり、森川萤子はさらに数分間浸かってから、ふらふらとお湯から出た。白い肌はお湯で蒸されてほんのり桃色に染まっていた。
彼女は体の水分を拭き取り、バスタオルを巻いてドアの方へ向かった。
床に足をつけると、まだ少ししびれを感じたが、先ほど立つこともできなかった状態よりはずっと良くなっていた。
彼女は浴室のドアを少し開け、外に誰もいないことを確認してから、さらに少し開けた。そして、ドアの外の椅子に置かれた服を見つけた。
彼女は手を伸ばして服を取り込んだ。
一枚の男性用の黒いシャツと、一本のパジャマズボン。
森川萤子は二つの服の間を探り、再びドアを開けて床を見たが、下着は見つからなかった。彼女は拳を握りしめた。
振り返って床に置かれた自分の服を見ると、彼女は軽く唇を噛み、下着を洗って乾かし、着てから出るべきか考えた。
考えていると、ドアの外で物音がした。
「着替え終わった?」
森川萤子は歯を食いしばり、まず黒いシャツを着た。服は長くて大きく、太ももまですっぽりと覆った。そして彼女はパジャマズボンを履いた。
ズボンの裾は長すぎたので、何度か折り返した。幸い、ウエストはゴム製だったので、なんとか留まった。そうでなければ履いた途端に落ちてしまうところだった。
着終わった後、森川萤子は鏡の中の自分を見た。青白い顔に不自然な赤みが浮かび、大きな黒いシャツが体にぶら下がり、まるで大人の服を盗んで着た子供のようだった。
浴室の方へ足音が近づいてくるのを聞いて、森川萤子はそれ以上のことを気にせず、ドアを開けて出た。