040 片桐陽向の愛の目覚め

ショーの舞台裏は混沌としていて、デザイナーの夏目清美はモデルの登場順序を確認していた。彼女たちは午後にすでに何度かランウェイのリハーサルを行っていた。

一度目は不慣れでも二度目には慣れるもので、さらに番号が振られていたので、呼ばれた人は入り口で待機するだけだった。

白井沙羅が舞台裏に清美を訪ねてきた。夏目清美は白井沙羅の海外の同校の先輩で、沙羅より数学年上だった。帰国後、縁あってファッション界の新鋭デザイナーとなっていた。

清美はピンクのチューリップスカートを着て、忙しくて沙羅をもてなす暇がなかったので、彼女に自由に見て回るよう言い、ショーが終わったら改めて謝罪すると伝えた。

白井沙羅は先輩が今日とても美しく魅力的なのを見て、内心嫉妬していた。彼女が本当に忙しくて話す時間がないのを見て、彼女は側で待つことにした。

視線を彷徨わせていると、ちょうど遠くでメイクを調整している森川萤子が目に入った。

今夜の萤子はとても美しかった。

明るい蛍光灯の下で、彼女の顔は手のひらほどの大きさに見え、目元は繊細で精巧で、アーモンド形の目と赤い唇、鮮やかで愛らしく、黒い長いストレートヘアと相まって、精巧に作られた陶器の人形のようだった。

このような萤子には、人の同情を誘うような雰囲気があった。

白井沙羅は最近の久保海人の異常な行動を思い出し、心の不安がさらに強まった。

実は彼女はずっと知っていた。なぜ白井優花が久保海人の全身全霊の愛を得ることができたのか。それは彼らが初めて出会ったとき、優花が彼らの高校時代の制服を着ていたからだった。

青と白の制服、黒い長いストレートヘア、振り返って彼に微笑みかけたその瞬間、久保海人を彼と森川萤子の曖昧な恋の芽生えの時期に連れ戻したのだ。

森川萤子が白井優花の身代わりだというよりも、むしろ白井優花がずっと森川萤子の身代わりだったと言える。

なぜなら、その瞬間、久保海人が見たのは白井優花ではなく、白井優花を通して最初に彼の心を動かした森川萤子を見たからだ。

白井沙羅がこれらを知ったのは、白井優花が亡くなった後、彼女の日記を見たからだった。

彼女は森川萤子を見つめ、手足が冷たくなっていた。