音楽が半分過ぎ、森川萤子はすでにTステージの最前部に歩み出ていた。彼女は両手を腰に当て、左右に45度ずつ回転し、顎をわずかに上げ、振り返って微笑んだ。
周囲から驚嘆の息を呑む音が響いた。
片桐陽向の隣に座っていた制服姿の女の子は興奮して足踏みをした。「小叔父さん、見た?このモデルすごすぎる!さっきトイレで会ったんだよ」
「静かに見なさい」片桐陽向は膝の上に置いた両手をわずかに握りしめ、冷たい眉目に彼自身も気づかないほどの熱を宿していた。
その瞬間、彼はもはや衆生を見下ろす清浄な仏子ではなく、彼の俗世に堕ち、全身の愛欲が呼び覚まされていた。
片桐美咲は口をとがらせた。
小叔父さんは本当に塵一つ纏わない清浄な仏子だわ。どんな女性なら彼の心を動かせるのかしら。
白井沙羅は久保海人の隣に座り、森川萤子がTステージに足を踏み入れた瞬間から、彼女が失敗するのを期待していた。