森川萤子はにこにこと笑って、「私の曲は一曲千円よ。聞きたくないなら出て行ってもいいわ」
森川萤子は白井沙羅に好感を持っていなかった。
不倫と知りながら、それを堂々とやっている。モラルは犬に食われたのか。
白井沙羅の顔色が青くなったり白くなったりした。夏目清美はすぐに丸く収めようと、「萤子さんのピアノは素晴らしいわ。余韻が残るような演奏で、今夜はとても楽しかったわ。あなたたちがいてくれて感謝するわ」
森川萤子は微笑んで、頭を傾げてウェイターに何か言うと、すぐにウェイターが二つの赤いベルベットケーキを持ってきた。
「私からのちょっとした気持ちです。今夜、夏目社長の気分を害していなければいいのですが」と森川萤子は言った。
夏目清美は森川萤子の気配りを評価していた。彼女が望めば、誰もが心地よく感じるようにできるのだ。