069 この古い酢を飲む

森川萤子は病院で一晩過ごし、翌朝、主治医が回診に来た。

若松様の様子は昨晩目覚めたときよりもずっと良くなっていたが、まだ話すことはできなかった。

主治医が彼女の体の各種データを確認した後、若松様は一般病棟に戻された。

森川萤子の心にのしかかっていた大きな石がようやく落ち、彼女が荷物を整理していると、木村恒夫が介護士を連れてきた。

介護士は田中さんという名で、見た目からして実直そうで、仕事は手際よく勤勉だった。

森川萤子には分かった。木村恒夫はきっとしばらく観察していたのだろう。そうでなければ、こんな優秀な介護士を見つけることはできなかっただろう。

給料の話がまとまり、森川萤子は出勤時間が迫っていたので、急いで田中さんに二、三言指示を出し、会社へ向かった。

木村恒夫は昨晩夜勤だったので、ちょうど勤務が終わり、彼女を会社まで送ることになった。