片桐陽向は口角を少し上げ、半笑いで、オーラ全開で言った。「俺の辞書には、恐れるという字はない」
足を引っ張られるだけじゃないか?
片桐家の人間として、彼がこんな小細工に怯むはずがない!戦わずして退くことこそ、彼らの恥だ!
森川萤子は隣に座って会議の記録をとっていたが、片桐陽向のこの言葉を聞いて、思わず横目で彼を見た。
片桐陽向は今日、スモークグレーのスーツを着て、シャツのボタンを一番上まで留め、黒いネクタイを締めていた。全身から気品と禁欲的な雰囲気が漂っていた。
彼は神崎おじいさんや全ての幹部から難題を突きつけられ、明らかに不利な立場にいたが、たった一言で局面を逆転させた。まるで鋭い剣のように、人の心を直接突き刺すようだった。
森川萤子は認めざるを得なかった。執行社長の座に就ける人間は、誰も簡単な人物ではないのだと。