072 心疼は愛情ではない

茶室は一時静まり返り、しばらくして、江川源がようやく口を開いた。「同情は愛情じゃない。それに、隊長はそんなものを必要としていない」

「でも……」

江川淮は入隊以来ずっと片桐陽向の側にいた。片桐陽向がどんな人間か、彼以上に知っている者はいなかった。

彼はあんなにも冷たく、あんなにも悲しみに満ちていて、まるで高みから衆生を見下ろす神のようだった。

しかし彼は知っていた。実際、彼もただの人間で、愛されることを渇望していることを。

「江川淮、余計なことはするな。隊長の人生に干渉するな」江川源は彼の言葉を遮り、厳しい目で彼を見た。

彼らは片桐陽向の左右の腕であり、最も信頼される人間だった。だからこそ、彼らの言動は勝手気ままであってはならなかった。

江川淮は江川源を睨みつけた。

彼らは双子で、部隊から片桐陽向の部下として選ばれた時、皆は江川淮が落ち着きのない性格で、江川源が冷静で片桐陽向に最も似ていると思っていた。

その後、江川淮は片桐陽向の側近となり、江川源はより重要な任務を任されるようになった。

部隊の言葉で言えば、江川源は片桐陽向が背中を預けられる人間だった。

「俺は隊長の人生に干渉してない。今、運命の歯車が再び回り始めた。今度こそ、誰も隊長の幸せを邪魔できないさ!」

江川淮はそう言うと、踵を返して歩き去った。

「江川淮、江川淮」江川源は彼を追いかけ、声を低くして叫んだ。「お前、赤旗の前で誓った言葉を忘れるな。もしお前が誓いを破れば、俺は無事では済まないぞ」

江川淮の足が一瞬止まり、江川源は彼の背中にぶつかった。まだ体勢を立て直せないうちに、江川淮の言葉が聞こえた。「安心しろ、俺が死んでも、お前を死なせはしない、兄さん!」

江川源は一瞬固まり、顔を上げた時には、江川淮は既に長い廊下を出て行っていた。窓の外は太陽が輝いていたが、彼の体は寒気に包まれていた。

森川萤子はいつ眠りについたのか分からなかった。夢の中は奇妙で不思議な光景が広がり、彼女はまた果てしなく広がる砂漠に戻っていた。

彼女は真っ赤な服を着て、荒野の風にはためかせながら、手には銃を握っていた。

本物の銃だ!

森川萤子は銃を持ち上げた。砂嵐で目がかすみ、誰かが彼女に向かって走ってくるのが見えた。

「近づかないで、行かせて!」