120 体は交わすが心は交わさない

南紅のペンダントは、鎖骨の間の朱色のほくろのように、宝石の輝きで目を奪う。

森川萤子は一瞬呆然とし、手を伸ばしてそれを外そうとした。「いりません、あなたは…」

手首が片桐陽向の大きな手に掴まれ、ドアに押し付けられた。彼の掌は温かく、指の腹には薄い茧があり、彼女の脈を優しく撫でていた。

その一触れだけで、森川萤子の全身が緊張し、背筋がゾクゾクした。

「外さないで、南紅はあなたにとても似合う」

昨夜彼女が踊るのを見たとき、額の花の飾りは炎のようで、赤い衣装は人の心に直接届いた。

その時彼は思った、この世で南紅だけが彼女に相応しいと。

森川萤子は手首をもがいて、それでも外そうとした。「功なくして禄を受けず、私は…」

次の瞬間、彼女の唇が片桐陽向に軽くつつかれた。彼の声は低くかすれていた。「もういいよ、今は受け取って」