その言葉に森川萤子は気づかされ、急速に赤くなり始めた森川千夏の肌を見つめた。「江川さん、子供病院まで連れて行ってもらえませんか」
森川萤子は不安で手のひらに汗をかいていた。
彼女は森川千夏とあまり長く過ごしていなかったので、彼が海鮮アレルギーがあるかどうか分からなかった。
もし別の症状だったらどうしよう?
江川淮は車を子供病院へ向かわせながら、森川萤子を安心させた。「大丈夫だよ、病院で注射を打てば問題ないから、焦らないで」
森川萤子は森川千夏を抱きしめ、露出した肌に赤い発疹が出ているのを見て、彼がとても苦しんでいることを知った。
彼女は自分を責めた。「千夏ちゃんがカニを食べられないなんて知らなかった」
森川千夏は手を伸ばして彼女の目を覆い、少し嫌そうに言った。「泣かないで、醜いよ」
森川萤子は笑うか泣くか分からない気持ちになり、彼の小さな手を取り除いた。彼女は彼に以前から海鮮が食べられるかどうか聞こうとしたが、こんなに小さな子供が自分の海鮮アレルギーを知っているはずがないと思った。
結局のところ、彼女が普段この弟に関心を持っていなかったからこそ、彼が海鮮アレルギーであることさえ知らなかったのだ。
車が子供病院の入り口に停まると、森川萤子は森川千夏を抱いて車を降り、救急外来へ直行した。
順番を待って受付を済ませ医師の診察を受け、森川千夏はアレルゲン検査を受けて、海鮮アレルギーであることが確認された。
医師は注射薬を処方し、抗アレルギー薬も出した。森川萤子は森川千夏を連れて注射を打ち、薬をもらい、この一連の騒ぎで、もう正午近くになっていた。
江川淮はずっと付き添って走り回っていたので、医師は彼らを森川千夏の両親と勘違いし、江川淮は慌てて否定した。
病院を出ると、江川淮は車で迎えに来て、森川萤子は森川千夏を抱いて車に乗った。
注射を打ったが、アレルギー症状はまだ消えていなかったものの、森川千夏の様子は少し良くなっていた。
森川萤子は少し困っていた。この時間に森川千夏を幼稚園に送るのも適切ではないし、家に連れて帰っても、家政婦さんがいないので子供を見る人がいない。
「今日は社長が会社に行かないし、江川源が彼に付き添っているから、ちょうど私は暇だし、千夏ちゃんを見てあげるよ」と江川淮が自ら申し出た。