トイレから水洗音が聞こえ、加藤悠真は手を洗ってトイレから出てきて、全身がすっきりした。
「死ぬほど我慢してたぜ」
加藤悠真が大股で居間に入ると、深谷美香が黒いキャミソールのナイトドレス一枚だけを着ているのに気づいた。
シルク素材で、体のラインを美しく描き出し、照明の下で、生地は水面のように揺らめき、輝いていた。
彼はお酒を飲んでいたので、急に喉が渇き、目が深谷美香に向かうと、火傷したかのようにすぐに視線をそらした。
深谷美香は腕を組んで、彼の青二才のような様子を見て、嘲笑うように笑った。
「トイレを借りたなら、さっさと出ていきなさい」
加藤悠真は部屋を見回した。フレンチクリーム風のインテリアで、リビングは広々として温かみがあった。
彼は一周見回して、「こんな大きな家にあなた一人で住んでるの?怖くないの?」
「何が怖いの?」深谷美香はアイランドキッチンに寄りかかり、あまり上品とは言えないあくびをした。「ここは私の家よ」
深谷美香が話すと、加藤悠真の視線は思わず彼女に向かい、体内の血液がさらに沸騰した。
「あのさ、森川さんと一緒に住んでるって聞いたけど、彼女は見かけないね?」
深谷美香はイライラして言った。「小僧、大人のことに首を突っ込むな。トイレを済ませたなら、さっさと帰りなさい」
加藤悠真はその言葉を聞いて、胸が詰まる思いがした。「俺は20歳だ、もう成人してるんだぞ」
深谷美香は目を回して、彼を相手にする気もなかった。「ドアは左側よ。出るときはドアを閉めて。私は寝るわ」
加藤悠真は彼女の後ろ姿がドアの向こうに消えるのを見つめ、あれは間違いなく深谷美香の寝室だと思った。
彼女は本当に、あまり親しくない大の男を家に残していくなんて、彼が何か悪いことをするとは思わないのだろうか。
そう考えると、彼はまた胸が詰まった。彼は知っていた。深谷美香の心の中で、彼は男としてさえ見られていないのだと。
ふん!
片桐陽向は車の中で加藤悠真を待ちながら、森川萤子と連絡が取れず、なぜか不安を感じていた。
助手席のドアが開き、加藤悠真が車に乗り込み、片桐陽向の方を向いた。
「聞いてみたけど、森川さんは深谷美香の家にいるよ」加藤悠真は心の中ではあまり確信がなかった。