江川源は手に持った赤い絹を後ろに隠し、おしゃべりな弟に見せないようにした。
「どけ」
江川淮は彼が見せてくれないのを見て、逆に興味をそそられ、彼に飛びかかり、その赤い絹を奪おうとした。
「見せてよ、見せてよ、見たいんだってば」
二人は一人が奪い、一人が隠し、大騒ぎになった。
森川萤子は彼らに巻き込まれないよう、急いで片桐陽向を引いて横に避けた。
「片桐社長、江口補佐はまるで知能が足りない子供みたいですね」森川萤子は皮肉った。
江川淮は赤い絹を奪いながらも、森川萤子のその冗談を聞き逃さなかった。彼は怒って言った。「森川秘書、こっそり私を悪く言っても、聞こえてるんだからね」
森川萤子は可愛らしく舌を出した。
一瞬、時が静かに流れ、片桐陽向はちょうど下を向いて見ていて、森川萤子を見た時、彼は赤い絹を握る指をきつく締めた。