山登りに行く同僚はたくさんいて、みんな大勢で出発し、準備は万全だった。
鈴木優子も一行の中にいて、森川萤子が周りから注目を浴びているのを見ながら、黙って彼らの後ろについていった。
誰かが森川萤子に尋ねた。「森川秘書、片桐社長は訓練に参加しないんですか?」
森川萤子はそこで片桐陽向がさっくじを引いていなかったことに気づき、笑いながら言った。「片桐社長は公務多忙ですから、リゾートに来て指揮を執ってくださるだけでも私たちの幸運です」
「ふん、おべっか使い」と横から誰かが冗談めかして言った。
森川萤子は相手に悪意がないのを見て、みんなと一緒に笑い、「何を着ても、おべっかは効くものですからね」
彼女がこんなに親しみやすく、会社でのようなクールさがないのを見て、みんなは彼女にさらに親近感を抱いた。
一行は冗談を言いながら会話を楽しみ、山へと進んでいった。
森川萤子は小さなバックパックを背負い、中には水筒と日焼け止めスプレーが入っていた。
しばらく登ると、彼女は息を切らして立ち止まった。一緒にいた人たちはすでに先に行ってしまい、彼女はバックパックから水筒を取り出して水を飲んだ。
渡辺佳子が隣に立って手で扇いでいた。「暑すぎる。今夜宿泊するって急に言われたけど、服も持ってきてないわ」
「リゾートの外にショッピングモールがあるみたいだから、下山したら見に行きましょう」と森川萤子は言った。
「いいわね」渡辺佳子は振り返って彼女を見て、視線が彼女の脚に落ちた。「森川秘書、肌白いわね」
森川萤子は水筒をバックパックに戻し、どんどん遠ざかる大部隊を見て言った。「行きましょう、早く行って早く帰りましょう」
二人は前に進み続け、彼女たちの後ろにも遅れている人たちがいて、その中に鈴木優子もいた。
彼女たちは一気に大部隊に追いつき、誰かが振り返って二人をからかった。
「君たち普段あまり運動してないんだろうね、こんな短い距離でもう息切れしてるよ」
渡辺佳子は言った。「そうなのよ、ホワイトカラーは毎日深夜まで残業して、運動する時間なんてないわ」
男性の同僚が森川萤子の側に寄ってきた。「森川秘書、バッグを持ちましょうか?」
森川萤子は笑顔で丁寧に断った。「ありがとう、でも重くないわ」