第46章 私は女性が口紅を塗るのが好きではない 収集をお願いします(1)

車内:男の冗談めいた言葉が耳元に響き、西村絵里は唇を引き締めた。

「黒田社長は冗談を言っていますね。私は常に黒田社長の言葉を心に留めています」

そう言うと、西村絵里の口元に甘い笑みが浮かんだ。この明るい笑顔に、黒田真一の黒い瞳はさらに深みを増した。

西村絵里の笑顔は輝いていた。それが作り笑いだとわかっていても、心の奥の何かが揺さぶられた。

……

トーテムに着くと、西村絵里は黒田真一に直接休憩室へ連れて行かれた。全行程で西村絵里は意図的に下を向いて歩き、人に顔を見られないようにしていた。

休憩室では、メイクアップアーティストとスタイリストがすでに長い間待っていた。

「黒田さん、黒田奥さん、こんにちは」

初めて、黒田真一以外の人からそう呼ばれ、西村絵里の顔色が少し青ざめた。