第45章 黒田奥様は他の男性をとても気にかけている(2)

ここまで言うと、西村絵里は微笑んで自分の席に座った。矢崎凌空は再び顔色を失った。

彼女は黒田奥さんなど全く知らなかった。

仙台の人々にとって、黒田真一は絶大な権力を持ち、その素顔を知る者はなく、謎に包まれていた。

しかし、さらに謎めいているのは2年前に豪門に嫁いだ黒田奥さんだった。

皆の前で自分が黒田奥さんと親しく、彼女のお気に入りだと言ったのは、他の人々に諦めさせるため、黒田真一を誘惑しようとしないよう、自分が見ているぞと知らしめるためだった。

他の人たちを蹴落とせば、自分にチャンスが回ってくる。

矢崎凌空は急所を突かれ、特に西村絵里が黒田真一への不純な企みを暗示したことで、心が乱れた。

西村絵里がそう言うと、他の女性社員たちがすぐに集まってきた。

「主任、私たちのことも良く言っておいてくださいね。黒田社長は奥さんをとても愛しているんでしょうね。結婚して2年、毎年の忘年会に連れてきて、スキャンダルもない。今時、黒田社長のような完璧な夫はどこにもいませんよ」